平成18年度花粉症の重症化予防治療(初期治療)

 

 スギ・ヒノキの花粉飛散量が非常に多かった平成17年春に比べ、花粉飛散量は少なく平年をやや下回る飛散量と予想されています。花粉飛散量が少ないと予想されますが平成17年春に大量に花粉を吸入して過敏性が亢進していることが考えられますので花粉飛散量に比べ症状が強く出る可能性があります。

花粉症治療はまず花粉の吸入を避けることが重要です。鼻からスギ花粉の吸入がなければ、理論的にはスギ花粉症は起こりません。マスクめがねなどが有効です。

しかし、現実問題として社会生活をおくりながらスギ花粉を避けるのは難しいことです。そうなると薬や、手術(レーザーやアルゴンプラズマ療法)の力を借りることになります。

毎年強く症状の出る人は、早めに耳鼻咽喉科を受診して診察をうけて花粉症の重症化予防治療(初期治療)を開始することをお勧めします。具体的な治療は下にお示しします。

 

 1.薬による治療

 一般的に花粉症治療に用いられている第2世代抗ヒスタミン薬(一般的にアレルギーのお薬と言われているもの)をスギ花粉の飛散が開始(*)する2週間前(症状のでる前)から飲み始めます。症状がでてから薬を飲み始めるのに比べて、症状が軽くすむことが多いとのデーターが出ています。特に鼻水、くしゃみが強いタイプの人に効果的です。

症状が強く出る人や鼻づまりが強い人には、内服薬に加えて局所ステロイド薬のスプレーを併用します。局所ステロイド薬のスプレーはステロイドの内服薬と違い使用量がごく微量で体に吸収されにくいため安心して使用していただけます。

どうしても強い症状が取れない場合は、一時的に少量のステロイドの内服を行います。

 

2. 下鼻甲介粘膜焼灼術(レーザーやアルゴンプラズマ療法など)

 毎年お薬を使っても鼻づまりが強い人には下鼻甲介粘膜焼灼術という選択肢があります。下鼻甲介粘膜焼灼術とはレーザーやアルゴンプラズマ療法により、アレルギー反応の起こる下鼻甲介という鼻の中の粘膜を熱変性させてやり、スギ花粉を吸入してもアレルギー反応を起こしにくい粘膜にしてあげます。特に鼻づまりの強いタイプの人に効果的です。
 施行後、約
2週間は鼻づまりや鼻水が増え不快な期間がありますが、その後は、花粉に強い粘膜になりますので花粉症の症状(特に鼻づまりに関して)が発現しにくくなります。あくまでも対処療法であるため、重症の人には花粉の飛散量と症状を考慮して薬を併用する必要があります。根本的に治す方法ではないので誤解のないようにしてください。正しい理解のもとで治療を受けると鼻づまりに関しては非常に高い効果を示します。

 

 以上、代表的な予防重症化予防法でしたが、選択肢として特に鼻づまりで困る人はレーザーやアルゴンプラズマ療法、鼻水・くしゃみで困る人は内服薬による予防、両方でお困りの人は、レーザーやアルゴンプラズマ療法に加えて内服薬による初期治療を併用されてはいかがでしょうか。また、長期的に花粉症を克服したい人は特異的減感作療法を試されてはいかがでしょうか。

      スギ花粉の飛散開始は、「一測定点で、1月以降にスライドガラスの1平方センチメートル内にスギ花粉が1個以上捕集される日が、原則として2日以上続いた最初の日とする」とされています。これはその年の1月の最高気温を毎日足していった値によるとされており350℃~400℃に達した時が目安になるとされています。では、いつごろ花粉の飛散が開始するかというと、過去のデーターからみて、東京都の場合は2月5日~20日の間ぐらいです。年によって2週間程度の差があるため、東京都の場合は1月中旬から予防的に薬を飲み始めるとよいでしょう。

 

西城 隆一郎

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