子供の扁桃の病気


  “のどが痛いです” “扁桃腺が腫れて痛いです”と訴えて耳鼻咽喉科を訪れる患者さんは,全患者さんの15〜20%にもなります。とくに子供はしょっちゅう咽喉の炎症を引き起こします。カゼはウイルスの感染によって起こりますが,治りかけた頃に細菌の感染が加わると更に炎症が長引くようになります。カゼのぶり返しは扁桃の細菌感染によることが多く,こうなると安静や市販のカゼ薬のみでは治まりがつかなくなることがあります。
  一般に「扁桃腺」と言い習わされている扁桃は,分泌液を作る線組織ではな くリンパ組織ですので,現在は「扁桃」と言います。1774年8月杉田 玄白等がタ−ヘル・アナトミア(人体解剖書)を翻訳し,解体新書を出しましたが,その中で扁桃を「ハタンキョウ核」と呼んだのが最初です。扁桃とはア−モンドのことで口蓋扁桃がその形に似ていることから名付けられました。扁桃組織は鼻咽腔・咽頭の回りを要塞のようにぐるりと輪状に取り巻いています。この輪は発見者の名前にちなんで「ワルダイエル咽頭輪」と呼ばれています。輪の中に上から咽頭扁桃(アデノイド)・耳菅扁桃・咽頭側索リンパ濾胞・咽頭後壁リンパ顆粒口蓋扁桃・舌根扁桃があります。扁桃は主に小児期に外から入ってくる細菌や抗原の侵入を免疫学的に防衛する重要な役目を担っている免疫臓器です。しかし抵抗力のない子供や,大人でも体が弱っている場合には細菌の侵入を防御出来なくなり,扁桃は炎症性に肥大したり,頻回の炎症によって扁桃の中に細菌の巣が出来てしまい腎炎・リュウマチ・掌蹠膿疱症等の病気を引き起こす元になってしまうことがあります。これを扁桃の病巣感染といい,保存的な治療の効果がなく手術が必要となるようになります。
  治療はカゼ症状では安静・温湿度の調節・対症療法を行い,急性細菌性炎症は抗生物質で保存的に治療します。小児期で免疫に関与している時期には出来る限り保存的に治療することが大切です。しかし次のような時には手術をいたします。
  (1)全身的保存療法が効果なく,炎症を繰り返すとき (2)急性炎症のつど蛋白尿を認める時 (3)急性炎症のつど心音・心電図に異常認めるとき (4)抗生物質を投与してもA群β溶連菌が頻回に検出されASO値・ΙgG値が異常高値を持続するとき (5)扁桃が異常に大きくて呼吸・嚥下・睡眠障害を伴うとき (6)明らかに扁桃が病巣感染の場であるとき (7)扁桃が原因で中耳炎や副鼻腔炎を頻回に繰り返すとき (8)心因的疾患を併発したとき (9)発育障害の原因となっているとき
  扁桃には大切な役目がありますし,全身とのかかわりを持ってもいます。たかが“のどの痛み”と軽く考えないで早目に治療して下さい。

東京都耳鼻咽喉科医会